音楽家への道はとても競争の厳しい世界で、常に自分との闘いです。
そんな厳しい環境でどれほどの音楽家が自分の心と向き合い、心の声に耳を傾け、労わることができているのでしょう ?
おそらく多くの音楽家が悩み、苦しみ、時には病んでしまうことさえあると思います。
私は音楽家とスポーツ選手は、常に自分を磨き激しい競争社会の中で生きているという点においてよく似ていると思います。
スポーツの世界ではコーチという存在がいて、メンタルのサポートやトレーニングをするのが当たり前なのに対して、音楽の世界ではどうでしょう ?
以前に比べるとだいぶメンタルの重要性が指摘されてはきましたが、まだまだ十分に浸透しているとは言い難い状況だと思います。
今回はこの『音楽家のメンタル』という点に注目して、私の体験談も交えながら心と身体のつながりと心のケアの大切さ、つぶれないために出来ることをお話しさせていただければと思います。
本題に入る前に少しだけ私の自己紹介をさせていただきますね。
永田美樹 Nagata MIKI
国立音楽大学のトロンボーン科を卒業後フランスのトゥールーズ地方音楽院へ留学、同音楽院を卒業後パリ国立高等音楽・舞踊学校とならぶフランスの名門リヨン国立高等音楽院バストロンボーン科へ入学。卒業とともに国家演奏者資格を取得。
その後、トゥールーズ高等音楽院にてトロンボーン講師の国家資格を取得し、現在ブリーブ=ラ=ガイヤルド、チュルの各地方音楽院とトゥールーズの音楽学校でトロンボーンの講師として活動しています。そして最近「メンタルコーチ」になるための勉強をはじめました。
自分で言うのは気が引けますが、経歴だけを見ればフランスに渡りそれなりに充実した音楽人生を送っているようにも見える私が、なぜメンタルコーチになるための勉強をはじめたのか?
ここからは体験談も交えながら私がフランスでメンタルコーチとしての勉強をスタートさせたいきさつをお話ししたいと思います。
音が出なくなったあの日
私自身メンタルが強くなくリヨン国立高等音楽院学生時代に自信を失い心を病んでしまい、身も心もボロボロになって楽器が全く吹けなくなるという経験をしています。
一日たまたま音が出ない日があったというレベルの話ではなく、ある日を境に全くトロンボーンが吹けなくなってしまったのです。
そしてまたゼロから、いえゼロどころかトロンボーンを持っただけで涙が出てくるというマイナスの状態から少しづつ組み立てなおし、その時から6年経った今ではまだリハビリ中の部分もありますが、大分回復して楽器を吹くこともできるようになりました。
この連載記事では私と同じような思いをしている人を少しでも減らせたらと思い『私の経験とメンタル専門家』について書かせていただきます。
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この先の主な内容。
・「心のケア」の大切さ
・迷わず専門家のところへ〜メンタル専門家のあれこれ〜