サウンドエンジニアとしてクラシック音楽のライブ配信に携わる【後編】|元木一成(サウンドエンジニア)Part3

音楽家にとっても重要な要素である「音」に関して、録る側の方からのお話をお聞きしている本連載シリーズ。

当サロンのライブ配信事業にも全面的にご協力いただいいるサウンドエンジニアの元木一成氏に執筆いただきながらお届けしております。

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音響さんって会場やホールで見かけることはあるけれど、具体的には一体なにをしている人なのか?

第三回となる今回は「サウンドエンジニアとしてクラシック音楽のライブ配信に携わる【後編】」として、元木氏がクラシックコンサートのライブ配信を行う際に音響担当として入られる際の具体的な仕事内容についてお話いただきました。


当日セッティング〜実際のセッティング〜

公演当日。会場入りしたらホールのスタッフさんに挨拶して、音響担当のスタッフさんと事前に打ち合わせしたレンタル機材や回線などの確認をして、セッティングを行います。

メインマイクのセッティング

はじめにメインマイクとなることの多い三点吊りマイクのセッティングをします。ホールのスタッフさんと協力しながら自前のDPA2006A(もしくはホールのDPA4006Aなどの全指向性のマイク)をステレオバーを使って、マイク幅30~40cmくらいでセットします。

装置で吊り上げる前に、マイクが対象に向くように角度などもきちんと調整するため、高さや位置など「どこに吊るかのポイント」をある程度決めておかなければなりません。

そのためにも、会場入りしたらまず会場内の“響き”を聴くようにしています。

私の場合ですが、ステージで調律や音出しをしていたりすればそれを聴きながら、音出しをしていなければ他のスタッフにステージ上で手を叩くなどしてもらいながら、客席内を歩き回ります。

クリティカルディスタンス

ステージからの「直接音」とホールの残響や「間接音」が同じ量に聞こえる距離を探します。これをクリティカルディスタンスと言います。

ホール収録でいう音の近さや遠さというのは直接音と間接音のバランスで(マイクや音源の指向性はひとまず置いておきます)、直接音は音源から離れるほど減衰しますが、音響調整がきちんとされている部屋の残響のエネルギーは音源からの距離にかかわらずほぼ一定です。

ですので、部屋の残響のエネルギーと音源から直接マイクに入るエネルギーが同量になるポイントを探して、そこから音を聴きながら調整するのがよいと思います。

ちなみに私はクリティカルディスタンスとなるポイントを探す際に片耳で聴きながら探すことが多いです。

片耳で聴くのは私にとってマイクの拾う音に近い聞こえ方だから。人間の耳はとても良くできており、視覚によるものもあると思いますが両耳で聴いたとき残響はあまり意識に残らず“広がり”として聞こえるので、遠い距離でも直接音がそこそこ明瞭に聴こえています。

それを私は片耳だけで聴くことで、マイクを通して聴く時と同じように聴くことができ、そのポイントでの音圧を感じ取りやすいように思います。

会場のクリティカルディスタンスが大体わかったら、ステージの演奏者からその距離だけ離れた位置もしくは少し近い距離に三点吊りマイクをセットします。

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主な内容は、

・リハーサル収録、セッティング調整
・配信での音の歪み(音われ)と適正音量に対して
・公演中にサウンドエンジニアがしていること
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