音楽家が株式会社を立てるまで|会社設立ノススメ①〜会社を立てる必要があるのか〜

会社設立のススメ

2023年5月。

音楽家のための会員制サロン Salon d’Art サロン・ダールは2020年新型コロナウイルス禍に音楽家を支援するためのライブ配信事業をスタートし、これまで多くの音楽家の方々とのご縁をいただいてきました。

そして、2023年5月。

Salon d’Artの事業を管理・運営する形での新法人「株式会社Soto」を設立し、音楽家の皆様をより強くサポートしていく体制を整えることとなりました。

今回の一連の記事では、これから増えるであろう会社設立を考える音楽家やアーティストの皆様にとって少しでも参考となるよう、法人設立の流れをまとめていきます。

 

会社設立のススメ

多くの個人がそうであるように、一人の音楽家にとっても会社を設立することが珍しいことではなくなってきました。

この記事を書いている私自身もこれまで自分が行なっていた音楽家としての活動や、その周辺事業をまとめる形で会社を立てることとなりました。

この記事は、これから「会社をつくろう」と考える音楽家の皆様にとって少しでも役になればと思い、備忘録的にまとめていく内容となっております。

日本の音楽業界全体において“ほんの数%”ほどしかないクラシック音楽。

そんな業界も、法人が設立されることで少しでも活性化して欲しいと思いながら、同じような思いを抱く音楽家の皆様の背中をほんの少しでも押せることができれば嬉しいです。

会社設立を立てる必要があるのか?

会社を作りましょう。

と言ってはみたものの、「そもそも会社設立することが必要なのか?」を見極める必要があります。

会社を立てることについては、メリットも大きいですがデメリット(というより会社設立によって発生する“責任”)も少なからずあります。

その中でも特に大きな点の一つが、

「会社(法人)が存在しているだけでお金がかかる」ということ。

私たち個人も生きているだけで払わなければならない保険料や税金があるように会社も法人=「人」なので、存在するだけでお金がかかります。

なので、その存在することに対する費用を支払うためにはやはり「売上を継続的に上げることができるかどうか?」が会社設立にあたっての最初の問題になってきます。

「売上を上げる」というのは当たり前と言えば当たり前の話なのですが、きっちりとした経営計画や売上の基盤があるかどうかはやっぱり大切。

どういった形態の法人かにもよりますが、有名な会社形態の一つである「株式会社」は

株式会社とは、株式を発行して資金を集め、そのお金を用いて経営を行っていく会社のこと。 集めた資金を用いて、商品やサービスを生み出していきます。 そもそも株式とは、資金を出してくれた人に対して発行する証券のことです。 株式を持っている人のことを株主と呼び、以下のような権利を持っています。(「マネーフォワード クラウド会社設立」

としており、会社の株を持っている「株主」に利益を還元する=つまり売上を上げて“利益”をつくることをその本来の性質として持っています。

よって、

“会社を立てる必要があるか?”

という問いについては、(音楽家の場合音楽をはじめとした自分自身が行っている事業を通して)

「売上を継続的に上げることができるその覚悟があるか」

と言い換えることができるといえます。

クラシック音楽では食えない。

さてここで課題となるのが、

そもそも音楽で安定した売上を上げることができるのか?

というテーマ。

“クラシック音楽では食えない”

というのは、おそらく多くの音楽家が身をもって感じていることだと思いますし、実際に私自身も音楽家という職業は「努力に対して支払われる対価が少なすぎる」職業の一つだと感じています。

小さい頃に音楽の世界に魅せられ、朝から晩まで自身のスキルを磨くことに全てを費やしても、実際にその道で食べていける人はごくわずか。

さらに言うと…例えば何十〜何百人が受験するプロのオーケストラの「たった1つ席」に(とんでもない倍率を勝ち抜いて)晴れて合格。その後、所属できたとしても、多くの場合実際にもらえる給料は一般的なサラリーマンの初任給程度(決してサラリーマンの皆様を貶めているわけではありません。)といったこともよくある話なのです。

確かな技術をもち、少なくない聴衆に対して“幸せ”を届けることができる音楽家。

なのにその能力に見合った適正な対価をもらえていない。という現実が日本にはあると感じています。

だからこそ、クラシック音楽業界に対して(適正に分配できるための)「お金」を生み出すこと、その覚悟を持って会社を設立しようとする個人の音楽家が出てくることは、今後の日本にとってとても有意義なことだと感じるのです。

音楽家のライフスタイルの確立

音楽家の夢とジレンマ

音楽家を目指した人は、そもそもなぜ音楽家になりたかったのか?

様々な理由があると思いますが、その理由の一つに

「自分の音楽を届けることで誰かが喜んでくれた」

という原始体験がある人も多いのではないでしょうか。

おそらくですが…「大金持ちになりたいから音楽家になる!」という理由で音楽家の道を志す人はそう多くない気がします。

(プロ野球選手のように“年俸◯◯億”となればなんだか夢もあるのですが、音楽家の給料に対してはどうやらあまり夢がないようです。)

音楽家の多くは、「自分の笑顔のため」でなく「他人の笑顔のため」に生きていて、

「だれかに自分の音楽を届けて、喜んでもらいたい。」

そんな純粋な思いが原動力になっています。

しかし、大人になるにつれてそんな夢を持っていた少年少女も「生きる」必要に迫られるようになる。

場合によって、音楽だけでは食べていけないことに気づかされる。

「誰かに自分の音楽を届け、喜んでもらいたい。」けど「生きていくためのお金がない」

というジレンマ。

音楽家だって生きていかなければいけません。

 

もっと言えば、「心が満たされている状態でないと音楽は届けられない」のかもしれません。

元々とてつもないエネルギーをステージ上で爆発させる音楽家は、

「日々の生活に追われてしまった状態」=「枯れてしまっている状態」

で、いい演奏をすることは厳しい。

日々の生活に追われるうちに、いつの間にか「誰かに自分の音楽を届け、喜んでもらいたい。」というそもそもの自分のスタートすら見失ってしまう。

これはとても残念なこと。

そんな悲しい状態に陥ってしまわないためにも、この記事ではこれからを生きる音楽家に「二の矢、三の矢を持つ」ことを薦めたいと思います。

二の矢、三の矢を持つ

ここでいう「二の矢」「三の矢」というのは、演奏を「一の矢」とした場合の

  • レッスン
  • YouTube
  • コンサート企画
  • 作編曲・楽譜販売

といった音楽のスキルに依るもの。

  • ブログを書く
  • 映像を作成する
  • 録音
  • 楽器を修理・販売する
  • デザインをする
  • コンサートスタッフをする
  • 音楽スタジオやホールをつくる

といった音楽スキルから派生してできそうなもの。

そしてさらに視野を広げて

  • 不動産
  • 株式投資

というように音楽とは直接は関係のないものと多岐に渡ります。

この時に大切なのは、本来自分にとっての音楽がそうであったように

“向いているかも?”や“やってみたいかも?”

と興味が湧くものを選ぶことです。

こんなことを言うと、

音楽家なら音楽だけをやればいいんだ。

という声も聞こえてきそう(もちろんそういう「職人気質」な考え方は尊いですし、実際にその道も間違いなくあります)が、最終的に会社を立てることを考えるのなら、結果的に事業が一つだけになるということはまずあり得ません。

そして、「二の矢」「三の矢」を持つことで自身の土台基盤が安定し、全ての「矢」が結局は自分の本来の目的だった

「誰かに自分の音楽を届け、喜んでもらいたい。」

ということに繋がっていくことに気づきます。

「音楽」×「“何か”」を軸に起業する

会社を目指してはじめる

ここで話を会社設立に戻します。

先ほどもお伝えしたとおり、音楽に関係する会社を設立する場合も「演奏だけ」が事業になるケースはさほど多くありません。

会社にするのであれば「音楽」×「“何か”」を軸にしてみてください。

「音楽」×コンサートなどの「企画」

「音楽」×「写真」

「音楽」×「映像制作」

「音楽」×「執筆」

など何でもいいのですが、先に述べた「二の矢」「三の矢」として自分が得意だと思えるものを会社の事業に据えてみましょう。

そして、ある程度自分の進みたい道が見えてきたら、まずは「個人事業主」としてその仕事をはじめることをおすすめします。

実際のところ、昨今これほどまでに会社が多く立てられるようになった背景には、「フリーランスとして個人が活動しやすくなった」という理由があります。これまで会社に所属し終身雇用されるのが当たり前だった時代から、様々な仕事をフリーランスとして受注しながら生きるといった新しい生き方は増えました。

音楽家は多くの場合大学卒業と同時にフリーランスとしてのキャリアをスタートしていると思いますので、まずは、そんなフリーランスのキャリアに自分の「二の矢」「三の矢」を乗せて活動してみてください。

まとめ

こう書いていくと「会社設立ノススメ」と言ってはみましたが、実際には「個人事業ノススメ」になりそうですね。

会社を立てると言うと、なんだかとても大きなことを始めるようについ感じてしまいますが、実際のことろは「 まずは自分自身でスタートできる事業を小さく始めてみよう」というお話でした。

そしてこれは、

「小さく初めて大きく育てる。」

というビジネスの鉄則にも通ずるものでもあるのです。

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