音楽家のための会員制サロン Salon d’Art サロン・ダールで行うクラシック音楽を中心としたライブ配信や収録事業の拡大とともに、FUJIFILMのカメララインナップが充実してきました。
今回の記事では、私たちが事業開始当初から一貫して使い続けているFUJIFILMについてまとめてみたいと思います。
FUJIFILMで動画を撮る。FUJIFILM遍歴。
クラシック音楽のライブ配信や収録事業を行う際に、ソニーのα6400とともにエンジニアさんからお借りして使いはじめたFUJIFILM X-T3がFUJIFILMとの出会いで、
そこから事業の拡大に伴ってX-T4を追加で購入、
そして、2022年の発売と同時に
FUJIFILM X-H2
FUJIFILM X-H2S(2台)
を入手し今では計5台となっています。
2023年1月時点で最近の機種の中で手元にないものでいえばX-T5のみ。それ以外の機種は全て所有して実際に全てを並行して使っている私たちが、
この記事では、そんなFUJIFILMのカメラを複数台扱う中で感じていることをまとめてみたいと思います。
FUJIFILMさん、いつもありがとうございます。
FUJIFILMのカメラの特徴。なぜFUJIFILMなのか。
FUJIFILMのカメラにももちろん一定数のファンはいるわけですが、FUJIFILMで「動画を撮る人」というのはまだまだあまり多くないと思います。
しかし、私たちの事業はクラシック音楽の配信や収録といった録音+動画撮影がメインでありながらも、FUJIFILMを選びました。
動画を撮るということに関してはFUJIFILMのカメラはまだまだあまり情報が出揃っていないように感じたので、各カメラの特徴を「動画を撮る」という視点からお伝えしてみたいと思います。
なぜ動画なのにFUJIFILMを使うのか。
その前に少しだけ、「なぜ私たちが動画を使う事業でありながらFUJIFILMを使っているのか。」ということについてお話しておきます。
細かい理由は省きますが、動画の性能や利便性だけで言えばやっぱり「SONY」や「LUMIX」にまだまだ軍配が上がるというのが動画業界の事情。
なのにも関わらず、FUJIFILMを選んだ理由。それは、
色表現が良い。
の一点。
なんだ。と思われた方も多いですよね。笑
散々言い尽くされたFUJIFILMの強みですが、やっぱりこれが一番の強みでした。もう少し具体的にお話ししておきます。
SONYと比べた時の“質感”の違い
先にも書いた通り、事業当初クラシック音楽のコンサート配信で使っていたカメラは「Sony α6400」と「FUJIFILM X-T3」でした。
録画性能がいいなど、Sonyは確かに圧倒的に便利だったのですが、両機種を比べた時にFUJIFILMの方が良いとなったんですね。
誤解を恐れずにいうなら、
Sonyはどちらかというと「ありのままを切り取る」
FUJIFILMは「美しく切り取る」
そんな印象の違いを感じました。
Sonyはどことなく「平らで無機質な印象」、FUJIは「生々しく人間的な印象」と言い換えても良いかもしれません。
クラシックのコンサートを撮影していると、Sonyの画がFUJIと比べると『なんだかよくわからないけど面白くない』と感じてしまったのです。
(ただし、オーケストラなど大人数のものを撮影するときはSONYの方が良いと感じることもありました。あくまでも室内楽や、ソロリサイタルといった“人間味”があるものを撮影するという当事業の性格に合ったのがFUJIFILMだったということになります)
“ライブ配信”という編集が難しい世界
収録して編集する機会も増えてきた今みれば、後からカラーグレーディングなどで色彩感などもしっかりと作り込むことができることが前提となる現場であれば、カメラごとの性能やメーカーの差というのはあまり大きな問題にならないのかもしれません。
しかし、私たちが当初事業のスタートの軸にあったのは「ライブ配信」という分野。
ライブ配信では、その場で色の編集することが難しい(=現場で撮って出しで映像をお客様に届けないといけない)というのも“FUJIFILMの色味が魅力的だった”大きな理由の一つです。
後から編集ができない前提の仕事をしていた私たちにとっては配信するためのカメラは「撮った瞬間すでにキレイ」なFUJIFILMのカメラである必要があったのです。
芸術分野に近いものを感じる“職人気質”なメーカー
最後に、意外と一番大切な部分かもしれませんが、FUJIFILMのカメラに対する姿勢に共感する部分が大きかったという点があります。
正直FUJIFILMのカメラの動画性能だけで見れば最下位に近いかもしれなかったFUJIFILM。
SONYやLUMIX、Blackmagic Designなどいいカメラを世に送り出しているブランドは他にもたくさんあります。
しかし、SONYやLUMIXはどちらかというとメーカーの気質的にも「電化製品として高機能」というイメージがあり、一方、Blackmagic Designも素敵なカメラが多いのですが、どことなく若い匂いがします。
その点、FUJIFILMは「フィルムメーカーとしての誇りを持って“カメラ”を作っている」という印象があります。フィルムというキャンバスにいかに色を落とすか。絵描きさんのようだと感じることさえあります。
FUJIFILMのカメラや開発者にはどことなく“職人”の匂いがします。
音楽家も元々「音楽」を極める職人ですから、そんな「カメラ」や「色」を極めようとするFUJIFILMの姿勢に自ずと惹かれてしまうのはある意味自然なことかもしれません。
実際に、私たちの周りには多くの音楽家やアーティストや彼らを専門に撮影するカメラマンがいるのですが、、みんな口を揃えて「FUJIFILM良いよね」という話をしているのですから、FUJIFILMは芸術分野のカメラという点に関しては確固たる地位を築きはじめているかもしれません。
FUJIFILMのカメラの機種ごとの特徴や使用感
さて、ここからは具体的に各カメラの機能や使用感を見ていきたいと思います。
専門的な仕様等は先人の方々がしっかりと情報を出してくださっておりますので、私たちはあくまでも「動画撮影のカメラを使う」という立場から話していきたいと思います。
みなさんに近い位置にいる分、これから「FUJIFILMで動画を撮ってみたい(かもしれない…)」という方には比較的近い目線でお話できると思います。
前提となる条件
私たちが今FUJIFILMのカメラを使って行うのは主に下記のような事業です。
- ライブ配信事業(カメラ台数1~4)
- オーディション用動画収録事業(カメラ台数1台)
- コンサートの収録事業(カメラ台数4~10台)
- 動画撮影してのPVやMV作成(カメラ台数4台)
- 公演写真やプロフィール写真の撮影(カメラ台数1台)
使っているカメラ・レンズ
私たちが今持っているFUJIFILMのカメラやレンズは下記です。
<カメラ>
- FUJIFILM X-T3
- FUJIFILM X-T4
- FUJIFILM X-H2S(2台)
- FUJIFILM X-H2
<レンズ>
私たちが今持っているFUJIFILMの主なレンズは下記です。
- FUJIFILM 単焦点レンズ XF18mmF2 R
- FUJIFILM ズームレンズ XF16-55mmF2.8 R LM WR
- FUJIFILM ズームレンズ XF18-120mmF4 LM PZ WR
- FUJIFILM ズームレンズ XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR
これらのことを踏まえて、各カメラごとのお話をしてみたいと思います。
FUJIFILM X-T3
持っている機種の中では一番古い機種にあたりますが、何かと便利なカメラです。
動画を撮る場合内蔵の電池は長くは持ちませんが、旧タイプの電池(四角い電池)で、給電しながら動画撮影ができる「カプラー」を使うことができるため実質長時間の映像配信などに重宝します。
ただし録画時間にはかなり制約があるため「回しっぱなし」には全く向きません。頻繁に撮り直す必要があります。
そして、意外と優秀なのが、「熱に強い」ということ。
後継機に当たるFUJIFILM X-T4と比べると手ぶれ補正がついていない分、熱を持ちづらいようです。
これまでも多くの現場でT3とT4の両方が出動させましたが、同じ環境下であればほぼ間違いなくT4に先に熱の警告が出ていました。
そして、手ぶれ補正がついていませんが、三脚に立てて動画撮ることの多いわたしたちにとっては手ぶれ補正はむしろ「いらない機能」なのであまり気になりません。
結果的に三脚に立てて動画を撮るのであれば、手ぶれ補正のあるX-T4より断然使い勝手が良いと思います。
色の感じも個人的には他の後発組のカメラと若干だけ違う気がして、“なんだかよくわかんないけどいい”印象を持ちます。(これは完全に個人の感覚ですので悪しからず。)
また、画素数もほどほどのためデータが軽く扱いやすいことも意外とメリットかもしれません。
総じて優秀なカメラで、おすすめです。
FUJIFILM X-T4
一言で言うならば「どっちつかずな機種」という印象。
X-T3やX-H2(S)、X-T5に挟まれた機種で、今となってはかなり不遇なポジションかもしれません。
X-T3より確かに画質は良いのですが個人的な総合点ではX-T3の方が優秀だなと思います。
そして欠点の一つ目が熱にとにかく弱い点。手ぶれ補正が効いている分熱を持ちやすいようです。
電池も新しいタイプとなっていますが、プロセッサーが後発のX-H2(S)に比べて一世代前なので結果的に電池の減りは早くX-T3と比べても大差ありません。カプラーは使えます。
手で持って撮影するのであればX-T3よりは使い勝手いいのですが、結論としては、三脚を立てることも多い私たちのような動画事業には意外と不向きな機種かもしれません。
FUJIFILM X-H2S
ご存知の通り、それまでのFUJIFILMのカメララインナップから動画性能が格段に飛躍した機種です。
このカメラの登場でやっとFUJIFILMも最低限の動画カメラ性能の地位を確立したと言ってもいいかもしれません。
実は、私たちも2020年の事業開始からT3とT4だけしか持たず、3台目以上のカメラが必要な場合はレンタルを繰り返していました。
その大きな理由が「長時間録画ができない」ということ。
X-T4以前の機種は録画する画質にもよるのですが、おおむね30分の動画撮影制限があり、コンサートのように「前半1時間」「休憩」「後半1時間」という現場の撮影には全く向いていませんでした。
そのため、私たちも長時間での外部収録が可能なモニターが必要となり
『Blackmagic Video Assist 7インチ 12G HDR』『Blackmagic Video Assist 5インチ 12G HDR』
の2台を導入することになっています。
そして、T4発売以降心のどこか(や巷の噂)で次のFUJIFILMの機種では「動画撮影時間の制限がなくなるのではないか」と踏んでおり、結果それを体現してくれたカメラが『FUJIFILM X-H2S』や『FUJIFILM X-H2』だったいうことになります。
前置きが長くなりましたが、X-H2Sの登場で一気に事業のしやすさが変わりました。
その一番のポイントはやはり長時間動画の撮影ができるようになったこと。
FUJIFILMとしては初の仕事として使える“動画を撮れる”機種かもしれません。
そしてプロセッサーが変わり、電池の持ちX-T4と同じタイプでありながらかなり優秀になりました。
具体的にはHD動画なら1時間で電池残量5個中の2〜3メモリ消費くらい。(2時間は流石にちょっと心配)
仮に、同じ条件の撮影をするとX-T3,やXT4は1時間で4つ消費して最後の1メモリになるので歴然の差です。
そして、これも多くのカメラレビューで言われていることですが、オートフォーカスも非常に優秀。
演算が早いおかげで、動画撮影しながら被写体にピント合わせた状態でズームリングを動かしてもピントを残してくれます。
(この点に関しては後発組のX-H2よりも優秀できっちりとピントを残してくれます。)
ただし、画質はその後発売されたX-H2に劣っており、その点においてはやはりX-H2に軍配が上がります。
また、H2Sの「S(スピード)」の恩恵に預かる場面も高速シャッターが必要なこともないので少ないです。
FUJIFILM X-H2S
画質はやっぱりそれまでの機種と比べてもかなり違うと思います。
言葉にするのは難しいですが、写真でも映像でも手にとるような“生々しさ”を感じることができるカメラです。
やはり画質が良いことはさまざまな現場で重宝するので、結果的には50-140等と併せてメインカメラになることが増えました。
そして、画素数の恩恵でとしてX-H2Sにはなかった機能『デジタルテレコン』がとても優秀。
1.5倍まで焦点距離を伸ばせるので、実質レンズが増えたようなもの。特に18-120のパワーズームレンズと組み合わせるとシームレスなズームイン・アウトができるようになりかなり「動画を撮りやすいセッティング」になりました。
ただし、この『デジタルテレコン』、実質的にはクロップなので4Kでの撮影時には使えないので注意が必要です。
また、欠点としてこれは高い画素数のせいなのか演算がH2Sと比べると多少遅いせいなのかわかりませんが、動画時にピント合わせた状態からズームリングを動かすとピントがずれてしまい、その場合AFも頼りにならないのは不便です。
結果的にオペラなどの動きの多い公演の場合は、H2Sがメインカメラとして出動します。
カプラは使えないがH2S同様電池が持ち、給電しながらの使用も可能なので電源の心配もグッと無くなりました。
おまけ〜外観
4種類の機種を比べても、X-T3がカメラとしては一番カッコいいと思います。
残りの機種はそれに比べると何かしらカメラというより機械ぽい感じになりました。X-H2SやX-H2もカメラの性能としては申し分ないくらい優秀ですが、ダイヤルの感じや無骨なデザインが好きと言ういわゆる“職人ぽさ”を感じるのX-T3だと思います。
そう言う意味では、X-T3と同じ形に戻ったのがX-T5というのはとても自然な流れかもしれません。
さいごに〜FUJIFILMの動画カメラとしての性能とこれから
業務機として圧倒的なSONY。
民間YouTuber等に人気のGH5を筆頭としたLUMIX。
と他社が動画に関しては圧倒的な立ち位置を築いてしまい、FUJIFILMのカメラはこと動画に関してはどうしても出遅れた感が否めません。
今のX-H2やX-H2Sがもしもう少し他社の同性能機種と出揃った状態で動画戦線がスタートしていたならもしかするとFUJIFILMの動画カメラとしての立場はもう少し強かったかもしれません。やはり、現実として
「確かに色などは魅力的だが今すでに所有している他社機材(のセット)を買い替えるほどではない」
という人も一定数いると思います。
ただ、裏を返せば私たちはギリギリ良いタイミングでFUJIFILMのカメラとお付き合いが始められたのではないかと感じます。
私たちはカメラ・映像業界に関しては新参者ですから、元々持っていたカメラやレンズもなく先入観なく「良い」と思ったものを使うことができました。
確固たるFUJIFILMファンを虜にしていることからもわかるように、FUJIFILMのカメラには他社のカメラにはない“強み”があります。
ただ、それが説明書などに書けるような言語化できるものでないというのがFUJIFILMの面白いところで、ここまで書いてみても結果的には
「なんかよくわからないけど美しい」
という結論に落ち着いてしまうのです。とにかく、感動できるカメラなのです。
そして、現状FUJIFILMのカメラをこれだけ手元に揃えて動画撮影の事業で使ってる身(他に同じような業者の方がいるのならぜひ仲良くしたいです!)としては、FUJIFILMの現行のラインナップにら動画に関しての不満は限りなく少ないということもお伝えしておきます。
特にライブ配信のようにその場で凝った色の編集ができない「撮って出し」勝負であれば他社より頭一つ抜けてると思いますし、いくら編集できるとしても「元の素材に対してストレスがない」というのはクラシック音楽などの芸術分野に携わる身としてはとてもセンシティブで大切なことだと思うのでこれからもFUJIFILMのカメラと美しい瞬間を切り取っていけたらと思います。
FUJIFILMのカメラ・レンズをレンタルできるレンタルスタジオ
さいごに、当サロンが運営している東京都門前仲町のレンタルスペースArt Space MONNAKA(ASMO)では、当方が所有しているFUJIFILMのカメラやレンズといった機材を実際にお使いいただくことができます。
撮影などにも使われることの多い、カメラを構えるにはとても適したスペースですので実際にFUJIFILMのカメラを購入前に試してみたいという方はぜひArt Space MONNAKAでの『機材レンタルサービス』もご検討いただければと思います。
その際は、FUJIFILMに惹かれている方々とまたいろいろなお話ができればと思っておりますので興味ございましたらぜひ一度足をお運びください。